中学校に入学する直前の春。


私は交通事故により、記憶喪失になった。









〜なんだかんだ叫んでみよう〜




























暗い・・・暗い闇の中・・・何も見えない。何も聞こえない。

声を出してみても、空気の音さえ聞こえてこない。心臓に手を当ててみても、鼓動が聞こえない。

自分は生きているのだろうか?いや…ただ不安だけがつのってゆく。








突然に音が耳に流れ込んでくるのが分かった。耳に・・・音が響いている。

何度も何度も繰り返し、音が響き渡る。その音色は時に鋭く、時に優しく大自然の合唱を奏で、地球全土を暖かく包むような演奏をし、

大いなる母の温もり 偉大なる父の威厳さ 他愛無い兄弟のような心地のハーモニーを奏でていた。

生命の全てがまるで合わさって一つの音楽を演奏しているみたいだ。

私はいきなり自分の前方が明るくなったのに気がついた。あぁ、きっとここが・・・誰もが最後に逝きつく場所なんだ。

私はそう感じ取り、開けていた瞼をゆっくり閉じた。

























――――






だれ?

誰か私を呼んでいるの?

チカッと眩しいくらいの光があたった。― 一筋の光が。




















優しい声がする― あなたはだぁれ?










ふっと軽くなった瞼を開ける。

まず目に入ってきたのは天井、そして徐々に視線を横にずらしてゆく。

そこには、心配そう・・・な気もしなくもない見慣れた顔があった。








「!?」



「まぁ!気がついたのね。お母さんもう・・・このままが目覚めなかったらいっそのこと息の根を止めようかと」




「それって危なくないですか!」



「こらこら母さん、が心配するだろう?」








そりゃするよ。何せ自分の命がかかってますから。は心の中でそっと呟いて、

自分の寝ているベットの横に立っていいる紛れもない父と母の存在を確認した。






「あらやだ、私ったら うふふふふ」



「お茶目だなぁ、母さんは あはははは」






笑えねえよ。一人娘の命がかかってるっていうのに。何この新婚でもないのに熱々ぶりは。

とりあえずこのままでは母と父の他愛無い会話が終わりそうにない。









「母さん、父さん、何してるの?どうして私はここに?」


「あらやだ、何も覚えてないの?お決まりのパターンで八百屋から転がっていったパイナップルを追ってトラックと衝突したんじゃない」


え!?何でまたナッポー!?








なにその設定、全然お決まりとかじゃないんですかど・・・縁起悪っ。そう呟いたの言葉は、母の気迫にかき消された。







「それにしても、惜しかったわね〜。」

「え?何が?」

「ついさっきまで恭弥くんも此処に居たのよ。」





             恭弥?


               恭弥・・・


                      あれ・・・思い出せない







「誰それ?」


「「!!?」」







母と父は、驚いた様子でヒカルの顔を覗きこんだ。








「あなた、本当に覚えてないの?ほら、幼馴染の恭弥くんよ。」



「誰の幼馴染?聞いたことない名前だね〜親戚の子?」








私がそう言った途端、母は私を強く抱きしめた。






「この子、記憶が・・・・」


「・・・そのようだね・・・」







母と父はとても深刻そうな顔をしていた。

後から聞いた話だが、どうやら私がまだ目覚めていない時に、お医者様に記憶喪失になるかもしれないと言われていたそうだ。

こうして私は記憶喪失になった。






恭弥―





彼の記憶だけ消えていた。








貴方はいったいだぁれ?





























「今日はの並盛中の入学式ね。」






事故からまだ二日しか経っていなかった。


幸運にも怪我一つしていなかった私は、目覚めたその日に退院をし、何事もなかったかのように普段と同じ生活をしていた。


でも、心には何か穴が開いている気がしてしかたがない。思い出したくても思い出せないものが心の中で渦巻いている。








「恭弥くんが一つ上だから何か分からないことがあったら恭弥くんに聞くのよ?」

「うーん。まぁそうする」





顔も名前も思いでも何もかも覚えていないのにどうしろと言うんだ母。

目を輝かせて手には何か危ないものをチラつかせていた母にはそんなこと、とても言い出せない雰囲気であった。























私は小学校の時から仲が良かった友達と一緒に学校の校門前まで来たが、

なんと!校門の前には学ランを来たリーゼント上等な人たちが前に立ちはだかっていた!

あれ?この学校って確か、ブレザーだったよね・・・・






「うわ。風紀委員だよあれ」


「風紀委員?って、あの風紀?」





いやいやいや、明らかにその風紀とかけ離れた人たちの集団じゃないっすかコレ

しかも、一人だけリーゼントじゃない人いますよ。

なんだか目つきが鋭くて怖そうだなぁ・・・







「あれ、見てよ!やっぱ格好良いよね〜雲雀さん♪」


「え?何々?」






友人が指を差したのはその目つきが悪くて怖そうな学ランを来た先輩。






「確かに・・・格好良いかもしれないけれど・・・」



「あの人ね、うわさによると並盛の不良の頂点に立ってる人らしいよ!」



「え?マジ?」






何ソレ、不良の頂点に立ってるのに周りの奴は皆リーゼントで本人様はなぜリーゼントじゃないんだろう。

気になる・・・凄い気になる・・・







「何でも、群れてる奴や気に入らない奴は仕込みトンファーで滅多打ちで噛み殺す!みたい」


「うっそぉ!?」






怖いなぁ・・・。

仕込みトンファーって・・・なんでそこで仕込みトンファー?

不良って言ったら木刀って相場が決まってるのに・・・まぁ、そうでもないかもしれないけど

噛み殺すって・・・歯で?トンファーの役割っていったい何?








「あ、、今変なこと考えたでしょ」


「何で分かったの?」


「今、すんごい顔してたよ」






どんな顔!?





「とりあえず、校内に入ろうよ。体育館で入学式が始まっちゃうし」


「うんそうだね。」




私と友人は校門前に立っている風紀委員の人たちに軽く挨拶をし、

雲雀さんは何だか怖かったので、目を出来るだけ合わせないようにして校内に入ろうとしたー


が、



ガシッ



「?」





手を捕まれたどころか、私の名前を呼ばれた。

アレ?私、こんな怖い風紀委員なんかに知り合いなんていたっけ?

と思い、振り返った。








ひ・・・・雲雀さん?








ワタクシ、何かやらかしました?






「。」


「えっと、あの・・・」





どうしよう。こんな時どうすればいい?

というか、知り合いだったっけ?いや、そんなはずない。この人のこと、何も覚えてないもの。

いや、もしかしたらブラックリストか何かに載ってたのかもしれない。

ここで「はい。私がです。」なんて答えたらヤバそうだ。







「どうしt「スイマセン人違いです。」



「・・・・」





私は必死になってそう叫び、捕まれていた手を振りほどいた。

とりあえず、逃げようかな。と思い反応のない雲雀さんをチラと見た。





「・・・・」






やべぇ、この人 今にも泣きそうだ。







体が小刻みに震えて、目に溢れそうなほどの涙が・・うるうるしてるし。

「委員長!」「委員長どうしました!?大丈夫ですか!?」「はい、うさちゃんのぬいぐるみですよー」という動揺の声が嫌がおうにも耳に入ってくる。

一部変な物があった気がするけど、ここはあえてスルーすることにする。








「す、すいません。冗談です冗談。」








私がそう言った瞬間、雲雀さんの顔はみるみるうちに明るくなった。

うわーこの人、扱いにくいなー








「?」



「え・・・あ、はい!」



「ぼさっとしてないではやく僕についておいでよ」



「なんでですか!?」





っていうかもう貴方誰ですか





「・・・・?」




やべっ。今の言葉、口に出してたかも。







「何言ってるの?僕のこと覚えてないの?」





「あ・・・はい」





もしかして、この人が恭弥?







「・・・・」


「・・・・」


「約束覚えてる?」


「約束ですか?」





いったい私はこんな怖い人に何を約束したんだ。








             よめ
「僕をお嫁に貰ってくれるって言ったじゃないか」







ちょっ・・・・



それはいくらなんでも ありえねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!





せめて婿に来いぃぃぃぃぃぃ!!!!!!





まぁとりえず言えることは、

どうやら記憶喪失前の私は、自殺願望者だったみたいです。









「私、一部記憶喪失したみたいで・・・」




「・・・・」



「・・・・」






沈黙がなおさら痛い。






ドッキリ?



「違います」






「ふーん・・・・」





やっぱりそうなったのか・・・と、雲雀さんはひっそりと呟いた。

なんだか悲しそうだ。






「しりとりしよう」






彼はパッと切り替えたようにこうきりだした。

なんで?なんでこの状態でしりとり?







「なんでですか?」



「僕からいくよ?」






シカトしたー





「とり」





とり?なんでまたそこからなんだろ。大体、無理やり始まってるんだけれど。

これってやるべきなのかなぁ?と思い、友人に目をやると、もうその顔からして「ヤレ」と言っていた。

あぁ、強制イベント?まあいっか。適当に答えちゃえ







「リン●ーン大統領」




「うぐいす」




「ストラヴィ●スキー」



「・・・・」



「・・・・?」








いきなり雲雀さんは黙って、そして私をまっすぐ見て言った。







間違いない





どうしてですか





あ。何か周りに居た風紀委員の人たちや、友人が何かヒソヒソ話をしている。

何か私変なことでも言ったかな?

雲雀さんを見ると、なんだか黒い。

非常に黒い。





「あ、何か良からぬことを考えていますね?」



「こう、衝撃を与えると治ると思わない?」





衝撃って・・まさか・・・

何故だか、私の体は拒否っている。くる・・・くる・・・アレが来る!






思いません





「一度試してみる?」




みません






トンファーを何処からともなく取り出した雲雀さんはカモンと手で合図を送ってくる。

誰が好き好んで死にに行くか。

記憶戻るどころか、全部なくなるよこれ。

いや、だからさ。



じりじりとにじり寄って来ないで







ガツン






そこで私は意識を手放した



















目覚めたら、見覚えのある顔・・・






ただいま。恭ちゃん―











「恭ちゃんの馬鹿。普通の人間だったら死んでるかもしれないでしょ。」









私の頭にはおおきなタンコブが出来ていた。









「大丈夫だよ。だってだし。」



へぇーちょっと面かせテメェ。






一発ぶん殴ってやる。私は拳を握り締めて恭ちゃんにじりじりとにじり寄った。

恭ちゃんは、冷や汗を流しながら、じりじりと後ろに後退する。









「」





「なに?恭ちゃん」








「ずっと一緒だよ」







「うん、ずっとね」






応接室で二人で笑いあった




E N D



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ア・ハッピーニューイヤー、皆さん新年あけまして、おめでとうございます。

本年もどうぞ「まるR」を宜しくお願いします。

著作権は捨てていませんが、この夢はフリー配布です。

貰っていただける人なんて多分・・というかむしろ一人もいないと思いますが、

もしそんな奇跡が起きたならば、ソースを右クリコピーで保存してください。

掲示板、メール、拍手などで報告くださると、喜んで飛んでゆきます(マテ)

報告は一応任意です。

今回は、年も明けたということで、新バージョンにしてみましたが・・・シリアスっていうか感動目指したつもりなのに・・

なお根強いギャグ魂よ。感動とかねぇよ。

しかも、もう最後、長くてめんどくさくなったので、適当打ち切り風終了ということで。まぁ、そんなこんなで。

ことよろ! by春未